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英語で読むジョー・バイデンの連邦議会演説

象徴的なドームを持つ米国議会議事堂が、曇り空の下を背景に描かれています。新古典主義建築の特徴である柱とアーチは、日本の文学でよく描かれる壮大さを反映しています。建物のふもと、小さな噴水のそばに人々が立っているのが見えます。
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バイデン大統領の議会演説

 

4月28日、米国のジョー・バイデン大統領が連邦議会の上下両院合同会議に際し演説を行い、政権発足100日間の成果を報告しました。

長時間立ったまま、身振り手振りを交え、しかもある程度のハイテンションで、文字通り「演じて説く」この演説。78歳のバイデン大統領にはかなりの重労働だったのではないでしょうか。米国大統領というのは、間違いなく世界で最もハードな職業のひとつだと思います。

どうしても前任者のインパクトが強すぎて、バイデン氏は華に欠ける印象(筆者の個人的な印象です)ですが、今回の議会演説では後ろに控えた女性2人、そう、ナンシー・ペロシ下院議長とカマラ・ハリス副大統領の存在感がものすごく、まるでバイデン大統領の後ろから射す「照明」のようでした。ハリス女史はなんといっても初の「Madam Vice President」ですからね。

キーワードはbuild back(米国の再構築)

前置きが長くなりました。肝心の演説内容です。演説の原文全文はホワイトハウスのHPで見ることができますので割愛しますが、今回の演説のキーワードは「build back(米国の再構築)」だったという印象です。(たぶん前任者がメチャクチャにしてくれた?)米国を再構築することが最優先であると強調したように思えました。

どこの国の国家元首も国内向けの演説はある程度、「私たちはすばらしい!」と自分の国を自画自賛した後に、自分は国と国民のために全身全霊で尽くすと約束し、最後に仮想敵国を出してきてそれに勇敢に立ち向かう私たちの構図で愛国心を煽り拍手喝采で終わる、というのがお決まりかとは思います。

Americaは140回

今回のバイデン大統領の演説では「America」もしくは「American」という単語がざっと数えて140回も出てきました。

そして、コロナウイルスだけでなくテロ・核問題、気候変動にいたるまで、「米国が同盟国(our allies)を率いている」と「グレートなアメリカ」を強調するオーソドックスな構成でした。

その同盟国のひとつであるはずの「Japan」は1回も言及されませんでしたが…。一方、中国には何回も言及し、しかも、外交上軋轢を生んでもおかしくないのでは?と思われるような表現もありました。以下が中国に関する言及です。

America is moving — moving forward — but we can’t stop now.  We’re in competition with China and other countries to win the 21st Century.

「私たちは前進している。今、止まるわけにはいかない。私たちは21世紀を勝ち抜くために中国や他の国々との競争の中にある」

Look, but think about it: There is simply no reason why the blades for wind turbines can’t be built in Pittsburgh instead of Beijing.  No reason.  None.  No reason.  (Applause.)

「(雇用について)考えてみてほしい。風力タービンのブレードを北京で製造できてピッツバーグで製造できない理由はひとつもない。ただのひとつもだ」(ここで拍手喝采が起きました)

in my discussions with President Xi, I told him, “We welcome the competition.  We’re not looking for conflict.”  But I made absolutely clear that we will defend America’s interests across the board.  America will stand up to unfair trade practices that undercut American workers and American industries, like subsidies from state — to state-owned operations and enterprises and the theft of American technology and intellectual property.

「中国の習近平主席との会談では、彼に競争は歓迎するが対立を望んでいるのではないと伝えた。ただ、米国の利益を全面的に守ることは明確にした。米国は、国営企業への補助金や米国の技術・知的財産の窃盗など、米国の労働者や産業を弱体化させる不公正な貿易慣行に立ち向かう」

I also told President Xi that we’ll maintain a strong military presence in the Indo-Pacific, just as we do with NATO in Europe — not to start a conflict, but to prevent one.  (Applause.)

「習主席には、NATO(北大西洋条約機構)とヨーロッパにおいて行っているように、インド太平洋地域に強大な軍事力配備を続けるとも伝えた」(ここでも拍手喝采が起きました)

まとめ

2013年9月、当時のオバマ大統領はテレビ演説で「America is not the world’s policeman (米国は、「世界の警察官」ではない)」と言いました。近代の歴史を見ると、それまで米国は“なんとなく”world’s policemenのような振る舞いをしてきた(期待されてきた)かと思いますが、当時のオバマ大統領は「もうやらないよ、そんなこと」という姿勢を見せたわけです。

それから8年、当時のオバマ氏と同じ民主党からの大統領となったバイデン氏の今回の演説は、米国は「世界の警察官」のような姿勢を再び見せつつも、自国の利益最優先がわかりやすく透けて見えるという点で、これまでの歴代米国大統領と比べて特に目新しさのないものだったのではないでしょうか。

By Acco
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執筆担当 阿部担当講師  阿部 毅(TOEIC985点)