英語の丁寧表現と適切なpleaseの使い方
日本のコンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、タバコなどはレジの後ろやレジ横に配置されているところをよく見かけます。
私はタバコを吸ったことはありませんが、買う時はタバコの番号と銘柄を指定するようですね。お客さんとお店の人とのやりとりを見ていると、大体「◯番」や「◯番、セブスター」、さらには指を指して「それ」「そこの」のように言っています。
私の経験だけかもしれませんが、「◯番下さい」や「◯番のセブンスターお願いします」、また取ってもらって「ありがとう」という言葉をあまり聞いたことがありません。
なぜ、そこが気になるのかというと、このやりとりを見て思い出すのはオーストラリアで生活していた出来事です。英語を学ぶために、2015年から2年間、夫と一緒に暮らしていました。
夫は当時まだタバコを吸っていました。海外ではタバコはとても高く、オーストラリアも例外ではありませんでした。ブランドによっても値段は変わりますが、当時1豪ドル100円だった頃で、標準的なもので、40本入りで日本円にすると4,000円ぐらいしました。
節約生活をしていた中でこの価格はかなり家計を圧迫していましたが、ま、それは今回は関係ないので、次回にしますね。
いつものように「タバコがほしい」と言ったら、突然「please!」と言われる
夫はタバコをスーパーマーケットで買っていました。お店ではタバコはインフォメーションカウンターのような中に、鍵をかけられた棚の中にありました。カウンターの中にいる人に、番号と銘柄を言って買うのですが、夫は日本にいる時に買うような感じで、「No.10,Camel.」と言って買っていました。
半年ほど経った頃、カウンターの人と話しはしなくともなんとなく距離感が近づいたようになってきました。慣れたようにいつものように夫が「No.10,camel」と、にっこり微笑んで言うと、カウンターの中にいた人が、突然「please!」と言いました。決して怒ってはいません。でも何で「please」と言われるのかわからず、むしろ「なぜ?何をお願いされているのだろう?」とキョトンとしていると、「No.10,Camel, please.」「No.10, Camel, please.」と諭すように繰り返されました。
そこでやっと、「please」をつけないで買っていたことは、失礼なことだと気づいたと言います。そして知らずに言葉足らずから相手への敬意がおろそかになっていたことを海外生活をして気づいたと言います。日本にいるだけでは気づかなかったかもしれません。もちろん相手を見下していることはまったくありません。「No.10、Camel.」という中に「ください」という意味も含んでいたのです。でも当然それは相手にはわかりません。
文法的には間違いではない。ではなぜ「please」だけをつけたのはだめなのか?
この話を、私たちが部屋を借りていた大家さんファミリーや語学学校の先生や友達に、自戒もこめて語りました。「これからはちゃんと”please”とつけるよ」と……。
すると「丁寧になるからと言ってなんでも“please”をつければいいものではないよ」と言われたのです。
例えば、レストランで「Menu, please.(メニューをください。)」「Coffee, please.(コーヒーください。)」や郵便局で「Two stamps, please.(切手を二枚ください。)」「Send this letter, please.(この手紙を送ってください。)」などと言うのは、失礼にあたるというのです。
理由は「please」とついてない部分「Menu」「Coffee」「Two stamps」は単語のみで、ぶっきらぼうな印象があること、「Send this letter」は文章そのものが命令文であり、相手を下に見ているニュアンスになるからです。
「please」だけをつけたのは文法的には間違いではありませんが、ちゃんと文章にして言うことが大切だということを、再び身をもって習いました。

英語の丁寧表現
丁寧に依頼する表現はたくさんあり、ニュアンスや使い方も異なる
「〜ください」を丁寧にして「~していただけますか?」と、丁寧に依頼する表現には、「May I〜?」「Can I〜?」「Can you〜?」「Could you〜?」「Could I〜?」「Will you〜?」「Would you〜?」などがあります。これらに「please」をつけると丁寧さが増します。
それぞれニュアンスの違いがあります。
・相手に許可を求める時
「May I〜?」や「Can I〜?」は「相手に許可を求める時」に使います。さらに「May I〜?」は、目上の人とやかしこまった場面で話す時に。友達などに使う時は「Can I〜?」がいいでしょう。
・相手に依頼する時
「Can you~?」は、友達など、親しい人に依頼する場合に。一方、「Could you~?」は、「Can you〜?」より丁寧な表現になります。なので、知らない人や目上の人にお願いする時などで使います。
また「Could you~?」よりも「Could I〜?」の方が丁寧な言い方になります。
さらに「Can you〜?」「Could you〜?」「Could I〜?」は、「Will you〜?」「Would you〜?」と比べるとより丁寧になります。「Will you〜?」「Would you〜?」は友人や家族など気軽な関係だけに使うという人もいます。
例をみていきましょう。
Can I borrow your pen, please?
あなたのペンを借りてもいいですか?
Can I have two stamps, please?
切手を2枚お願いします。
May I have your name, please?
名前を教えてもらってもいいですか?
May I have a menu, please?
メニューをください。
Could you do me a favor?
お願いがあるのですが。
Could I have a coffee, please?
コーヒーをください。
Would you pass me the salt, please?
塩を取ってください。
私は以来カフェやレストランできちんと文章にしてコーヒーやメニューを頼むようにしました。夫はタバコを買う時に「Could I buy No.10 Camel, please.」と言うようになりました。初めて文章でタバコを買う意思を伝えた時、「”please”をつけなさい」と教えてくれたお店の人は、目を丸くして、「Oh!」とつぶやいた後、胸に手をあて、感動したように目を細め、ものすごくにっこり笑ってくれたと言います。
それにしても「よく英語は敬語や丁寧な言い方はない」、と聞きましたが、今回の件で、それはないなとつくづく思いました。
byあいんちゅ
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ライターあいんちゅのプロフィール
語学、海外トラベル系の雑誌やムックの企画と編集そして執筆を長年しています。元大学教員。書くことが好きで常に何か考えて、書いていないと落ち着かない性分です。還暦過ぎてからの留学を実現するために日々英語勉強中。
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