英語の中に見える本音と建て前
アメリカには様々な背景を持つ色々な民族の人が暮らしているので、それぞれ独自の人間関係や文化があります。
そんな中にあっても、アメリカ全体で共有される社交辞令というものがあり、今回はそのような社交のための英語の言い回しを検討し、アメリカ英語表現の本音と建前について考えます。これらはTOEICのパート6でも頻出する表現なので、テストで聞こえて来る会話の全体的な話の流れを掴み、話者がどのような意図で言っているかを理解するのに役立てて貰えれば幸いです。
Do you mind~?
TOEICでは社内の会話がたくさんあります。会社は公の場ですから、言葉遣いも一段と丁寧になります。以下は人に何か頼むときのフレーズの一例です。
Do you mind finishing up that report by this afternoon?
このフレーズを聞いたらどんなシチュエーションを想像しますか? “Would you mind…?”ではないので、丁寧さが少し下がるということは分かりますね。では、このフレーズはどのような人が誰に言っているか考えてみてください。
これは、上司が部下に言っていると考えるのが一般的です。英語の場合、発言が長くなるほど丁寧になるという傾向があるので、このフレーズの長さからも比較的丁寧な表現ということが分かります。確かに、“Please finish up that report…”よりも丁寧な感じがしませんか?
ただ、英語の丁寧表現のやっかいなのは、言い方が丁寧だからといって話し手の機嫌がよいとは限らないことです。いわゆる、本音と建前ですね。アメリカの人たちは率直でダイレクトに話をするというのは大きな間違いで、上の例の “Do you mind finishing up…?”も、実は、「今日の午後までに必ずするんだぞ!」という意味になることがあります。日本人の上司なら、強い口調と怖い顔で実際に「…するんだぞ!」と言う場面も珍しくないかもしれませんが、社交を重んじるアメリカの文化では、たとえ上下関係があっても丁寧で優しそうな言い方をすることが多いです。それに、上司自身も会社に評価される立場ですから、パワハラなんて思われたくないという思惑があるのかもしれません。
というわけで、貴方も誰かに “Do you mind…?”と言われても、その口調や表現だけで判断して気を緩めたりしないようにしましょう。
You may want to~?
また、ほかにも人に何か行動を起こさせようとするときに使われる表現に “You may want to…” があります。 例えば、以下のような使い方です。
“You may want to check your mailbox before you go.”
これも、may(もしかしたら)やwant(したいと思う)が使われているので、相手の判断や気持ちをとても尊重してくれているように聞こえますが、 間違っても、“No, I don’t think I want to.”などと素直に答えてはいけません。というのも、“You may want to…”は、 “You should…”を遠まわしに言っていることが少なからずあるからです。気を付けましょう。波風を立てたくないのなら、“Thank you. I probably should.”と言っておきましょう。
Good job!
もう一つ、本音と建前を見極めないといけないのが、評価を表す言い回しです。
Good job!
よく聞く表現ですね。これも本当に褒めてくれていることも時にはありますが、「よく頑張りました」ぐらいの意味に取っておくほうが、後でガッカリしたり恥をかいたりすることがなく無難です。Goodが付いているからといって、何かが特に「良い」という意味ではないので要注意です。「よく頑張りましたね」、「とりあえず、貴方は失敗だけはしませんでしたね」と言われていると脳内変換をするようにしましょう。
同じような表現で “You did a great job!”というのもありますが、これもgreatと言われて浮かれるのは早すぎます。Good jobと同じく「失敗しなくてよかったですね」程度の社交辞令かもしれないと疑ってみることをお勧めします。
That’s a good question.
会議などの場面でよく聞かれるのは、次のような表現です。
That’s a good question.
この表現の真意はさておき、こう言ってもらうと発言もし易くなりますね。私の印象では、日本人だけの会議では、大抵、質問する人があまりいません。また、たまに誰かが質問しても、「とても良い質問ですね」と、まず質問自体を歓迎するという旨を言葉で表すこともないように思います。せっかく話し合うために皆が集まっているのに、もったいないですね。
さて、“That’s a good question”または “Fantastic question!”などアメリカの人がよく使う表現は、確かに質問し易い雰囲気にするのには効果はあります。でも、これらの表現にもウラがあります。ウラの可能性として一番高いのは、「その質問への答えは分かりません」です。つまり、“I don’t know the answer”の代わりにこう言うことがあるので、good questionと言われて、喜んでその質問を更に掘り下げて訊き直すなどということは、相手の様子をみてからにしたほうがいいですよ。
That’s interesting!
That’s interesting!
Interesting!
これもよく聞く表現です。ここまでこのブログを読んだ人なら、もうお分かりですね?これも、別にそんなに面白いとか興味深いとかなくても、平気で使われる表現です。本当に面白いと思ってくれているかどうかは、‟That’s interesting!”の後に相手が何を言うかで判断しましょう。興味を持って更に何か尋ねて来るようなら、文字通り面白いと思ってくれているのかもしれません。反対に、後に何も続かないのなら、「それ、つまらないね」と言われたのも同じと思って残念ですがさっさと引き下がることをお勧めします。
アメリカの文化は、日本以上に周りの人との軋轢を、少なくとも表面的には避けようとする文化なのかもしれません。色々な民族が集まった国では、他者との日々の交流を意識的にスムーズにしようと、会話にも工夫がされているのかもしれませんね。
参考:
An American Phrase Book
http://alumni.media.mit.edu/~guy/american/
12 English Phrases Meaning Something Completely DIFFERENT
https://englishharmony.com/phrases-with-different-meanings/
By Portland
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