人の性格を表す3つの「無」
「無邪気」「無鉄砲」「無頓着」「無謀」「無愛想」「無気力」……。日本語には頭に「無」がつくユニークな言葉がたくさんあります。
ただ、どれも英語にしようとする時にはちょっと悩むものばかり。
そこで今回は、数ある「無」がつく言葉の中から、馴染み深く、使う機会も多い、「無邪気」「無鉄砲」「無頓着」という、人の性格を表す3つの「無」表現を取り上げて解説したいと思います。
「無邪気」を英語にすると
最初に取り上げる「無がつく人の性格を表す言葉」は「無邪気」です。
「無邪気」は、国語辞典には、「あどけなくて素直なこと」「悪気やねじけた気持ちのないこと」などと書いてあります。
英語にする場合は「innocent」「ingenuous」といった形容詞が考えられます。
innocent
「innocent」は「無邪気な」「純真な」といった意味の形容詞です。「無罪の」「潔白な」という意味で使われることも多いです。
Vincent is as innocent as a baby.
(ヴィンセントは赤ちゃんのように無邪気です。)
日本語の「無邪気」には、肯定的な意味だけでなく、「深い考えのないこと」という意味もあります。実は面白いことに英語も同様で、「innocent」が「だまされやすい」「お人よしの」、あるいは、「悪気なく人の気分を害する」といったように、否定的に使われることもあります。
He is just innocent. That’s why we are always irritated by him.
(彼はただ無邪気なんです。それが、いつも私たちがイライラさせられる理由です。)
ingenuous
「ingenuous」も、「無邪気な」「純真な」といった意味の形容詞です。肯定的な意味で使われることも多いですし、やはり、「経験の浅い」というような否定的な意味合いで使われることもあります。
She showed me an ingenuous smile.
(彼女は私に無邪気な微笑みを見せた。)
「無鉄砲」を英語にすると
日本語の「無鉄砲」は、「どうなるか先のことをよく考えず、強引に事を行う態度・考え」です。同じ「無」が付く、意味の似た言葉として、「無謀」があります。
ここでは、「無鉄砲」や「無謀」を表す英語として、「reckless」「rash」「foolhardy」「madcap」を取り上げます。
reckless
「無鉄砲な」「無謀な」という意味を表す言葉。最初に紹介するのは形容詞「reckless」です。
It’s a reckless action!
(それは無鉄砲だ!)
George keeps doing reckless things.
(ジョージは無鉄砲なことばかりしている。)
You should not make a reckless attempt!
(無謀な試みをしないで!)
I was run in for reckless driving at a police cell.
(私は無謀運転で留置所に留置されました。)
rash
形容詞の「rash」には「向こう見ずな」「思慮に欠ける」「軽率な」といった意味があります。
It was a rash thing to do.
(それは無鉄砲な行いだった。)
Nancy was very rash to accept the task.
(ナンシーは無鉄砲にもその仕事を引き受けた。)
「make a rash decision」で「早まった決定をする」「無謀な決定をする」などになります。
I made a rash decision.
(無謀な決定をしてしまった。)
「rash act」「rash attempt」で「向こう見ずな行動」「軽はずみな試み」です。
I wonder why she has committed such a rash act.
(彼女はどうしてこんな無謀なことをしたのかしら。)
foolhardy
「foolhardy」は「行動が無鉄砲な」「行動が無謀な」という意味の形容詞です。
Don’t do anything foolhardy.
(無鉄砲なことはしないでください。)
「foolhardy attempt」で「無謀な試み」、「seemingly foolhardy idea」は「一見無謀に見える考え」、「 embrace a foolhardy resolution」は「無謀な決心を抱く」、などとなります。
This is a seemingly foolhardy idea, but…I think it’s a good idea!
(これは一見無謀なアイデアですが、良いアイデアだと思います。)
madcap
形容詞で使うと「向こう見ずな」「無鉄砲な」、名詞で使う場合は「向こう見ずな人」「無鉄砲な人」という意味があるのが「madcap」です。
That professor is madcap.
(あの教授は無鉄砲な人です。)
「madcap comedy」という表現を見ることがあります。直訳すると「無鉄砲なコメディ」「向こう見ずなコメディ」などになりますが、いわゆる「どたばたコメディ」と訳してもいいでしょう。
This drama is a madcap comedy.
(このドラマはどたばたコメディです。)
「無頓着」を英語にすると
最後は「無頓着」の英語表現です。
「気にしないこと」「物事にこだわらないこと」という意味の「無頓着」には、「careless」や「indifferent」などが使えると思います。
careless
形容詞の「careless」には「気にしない」という意味があります。
「be careless about」で「〜に無頓着である」という表現として使えます。
My father is quite careless about his clothes.
(父は服装には全く無頓着です。)
「say in a careless voice」で「無頓着な口調で言う」です。
He said in a careless voice, “I don’t care.”
(「気にしないよ」と、彼は無頓着な口調で言った。)
「be careless of one’s appearance」は「外見に無頓着」であることを表します。
My brother is careless of his appearance.
(兄は外見に無頓着です。)
「careless」は形容詞ですが、副詞の「carelessly」を使って表現することもできます。
I spent money carelessly when I was young.
(若い頃は無頓着に金を使った。)
indifferent
「無関心な」という意味の「indifferent」も「無頓着」という意味合いで使えます。
「be indifferent to」または「be indifferent toward」で、「〜に無頓着である」というニュアンスです。
My mom is indifferent to household chores.
(私の母は家事に無頓着です。)
まとめ
いかがでしたか?
今回は「無邪気」「無鉄砲」「無頓着」という、3つの「無が付く、性格を表す日本語」を英語でどのように言えばいいのかについて解説しました。
英語と日本語は一対一対応ではありません。今回ご紹介したもの以外にも、いくつもの英語表現が考えられると思います。状況に応じて、自分なりにいろいろと工夫して文章を作ってみるのも楽しいものです。
それでは次回もお楽しみに。
byあいんちゅ
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ライターあいんちゅのプロフィール
語学、海外トラベル系の雑誌やムックの企画と編集そして執筆を長年しています。元大学教員。書くことが好きで常に何か考えて、書いていないと落ち着かない性分です。還暦過ぎてからの留学を実現するために日々英語勉強中。